吃音と30年以上闘ってきた僕が伝えたい事③ ~緊張のほぐしかた~

コラム
コビー
コビー

緊張は吃音症状を悪化させるけど、コントロールする方法があるんや。吃音者は特に緊張の制御方法を知った方がええで。

ぼくは言葉を話し始めた頃から吃音症に悩み、30年経過した現在も吃音症と闘っています。今でも何かしらで毎日何度かどもりますが、生活に支障のない範囲まで克服することができました。

このブログは子どもの成績を上げることを主なテーマとして扱っていますが、今回は4記事に渡って吃音症に対して今までぼくが感じてきたこと、そして同じ悩みを持つ吃音者への助言を紹介します。このページは、その3回目の記事です。

緊張は吃音症の天敵です。しかし逆に言えば緊張をコントロールすることで、吃音症が改善しやすくなるんです。前回は吃音の対策法について紹介しましたが、今回は吃音者が苦手な緊張する場面を想定して適切な改善方法を深堀りします。

特に吃音者は前回の記事を読んでからこのページを読み進めてほしいです。

この記事を読んでほしい人

  • 子どもが吃音で悩んでいる保護者
  • 緊張に弱い方
  • 回りに吃音者がいる方
  • 吃音症の方で、具体的な改善方法が知りたい人

この記事の結論

  • 緊張は話すことでのみ緩和される
  • 本題に入る前に前置きを作ると、前置きを話す間に緊張が緩和される

緊張する場面と対処法

緊張する場面とは

人前で発表するときは特に緊張しますよね。

小中高生の頃は文化祭の劇、全校集会、表彰のスピーチなど、数百人を前に話すときは誰だって特に緊張します。社会人になってからは大きな会議の司会進行役、講演会でのプレゼンなど場合によっては千人規模を前にして話すこともあります。

ぼくは劇が大嫌いでした。苦手な言葉が入るセリフは何度練習してもどもるときはどもるし、周りの子はセリフを忘れたと思って小声で助言をくれるのですが、それがとても申し訳なく感じていました。セリフを忘れたふりをして、助言が聞こえないふりをしてしまうことが本当に辛かったです。

しかし緊張を短時間コントロールすることができれば、これらの場面でどもりにくくなります。そんな魔法みたいな方法が有るんかって話ですが、あるんですよ。効果てき面な方法が。

ぼくは最近、仕事の関係で国会議員や企業の重役が複数列席する重要な会議の議事進行役を任され、およそ5時間にわたって壇上で進行をとりました。会場では200名ほど、ライブ配信では300人を超えたと伺っています。2回ほど噛みましたが1度もどもること無く進行し、堂々とした進行だったと周囲からは大変好評をいただきました。YouTubeに動画はあるのですが、個人や会社を特定されたくないので心苦しいですがここでは紹介しません。

対処法を理解しているので堂々と話すことができ、聞いている人も安心して聞くことができるのです。さらに緊張に弱い非吃音者よりも、対策身についている吃音者方がこういった緊張の場面に強くなることができます。

今回はそんな魔法の薬みたいな話をします。

緊張のほぐしかた:大勢の人前で話すときの正しい緊張緩和法

緊張は、話すことでしか緩和されない

人前で発表するときは取れる対策が幅広いですから、実はそれほど恐れることはないんです。経験が長い吃音者の場合は、ぼくの様にむしろ得意な場面にもなりえます。要点さえ押さえれば一切吃音症状を出さず、難なく切り抜けることができるので対策を学びましょう

よく勘違いされる例として、深呼吸で緊張を緩和するという方法があります。しかし個人的な感覚ですが、深呼吸をしても状況が良くなった経験がありません。むしろ緊張感が増すことの方が多いです。他にも話し始める前にゆっくり数を数えるなど、緊張をほぐすエセ神話を色々と試しましたが、ぼくの経験で言えることは、緊張は話すことでしか緩和されません

吃音男子
吃音男子

いや、ぼく吃音やねん。話すことが難しいねん。おまえも吃音なら分かるんちゃうんか

コビー
コビー

もう一回前の記事を読んでくれ。自分が苦手な言葉を避けながら話すんや。そしたらどもりにくくなるねん。

吃音やのに話せって言うんかって思うかもしれませんが、これには話し方があるんです。それは2回目の記事に書いた吃音対策①「文頭から離す」、②「前置きを作る」の通り、苦手な言葉を避けて話しやすい言葉で話すというものです。何でもいいので本題に入る前に、どもりにくい言葉を使って場面に合わせて話し出しましょう

場面に合わせた、短く自然な前置きを文頭にもってくる

前置きを話す間に緊張はほぐれてきます。ただ前置きを長くしないことに注意してください。劇中であれ発表であれ、セリフを話す時間は限られています。どもり対策の前置きは最小限にとどめて本題に移ることが肝心です。

関係のない話をだらだらと話す

演劇での緊張のほぐし方

劇でもセリフに前置きを置くことで緊張を緩和します。

吃音女子
吃音女子

いや、でもセリフって決まってるやん

コビー
コビー

だから事前に周囲と相談してセリフ自体を変えておくんや。本番でいきなりアドリブかましたら当然キレられるで。

文化祭の劇では、セリフが決められています。決められたセリフを本番で変えると、後に続く演者や周りの人の迷惑になってしまうので、リハーサルまでに言いやすいセリフを提案して取り入れてもらいましょう

本番でいきなりセリフを変える

ポイントは、台本を読んで自分が苦手な言葉が出てくるセリフをピックアップすること。そしてピックアップしたセリフの前後や状況から考えて自然な言いまわしになるように、変えた後のセリフを具体的に考えてから提案すると、相談相手も納得しやすいです。自分の苦手な言葉の抽出については2回目の記事を参照してください。

  • 苦手な言葉が出てくるセリフをピックアップする。
  • 変更後のセリフ案を複数考えてから提案する。
吃音女子
吃音女子

ここが言いにくいから、こんな風に変えたいいんやけどええかな

コビー
コビー

場面に合ってたらOKや!

言いにくいから言い回しを変えるというのは、別にあなた個人のわがままではありません演劇を円滑に進めるために必要なことなんです。むしろ詰まってしまうことがわかっていながら本番でどもってしまう方が、演劇全体の雰囲気にも影響するでしょう。だから堂々とセリフ変更を要求してください。「雰囲気に合ってないからこっちの方が良い」などの建設的な意見が出た場合はそれに応じてみんなと考えましょう。しかし、そもそもセリフ変更が認められない場合は相手が悪いです。演劇を成功させるための健全な提案をしたあなたは悪くありません。先生や、場合によっては学年主任などを通して伝えていきましょう。言いにくい場合は保護者に頼っても良いんです。なにも恥ずかしいことではありません。

司会進行、発表などでの緊張の緩和方法

演劇など、自分のセリフが固定化されてしまっている場面より格段に対処しやすいです。根回しをする必要もありませんし、直前に変えても誰にも迷惑はかかりません。ただ、時間制限はあるでしょうから長々と前置きを話してしまうのはNGです。3つの吃音対策「①:苦手な言葉を文頭から離す」「②:話しやすい言葉で前置きを作る」「③:苦手な言葉自体を言い換える」で乗り切りましょう。

慣れていないと直前で適宜対処することは難しいので、一度自分でリハーサルしてみて苦手な言葉で始まる文節には場面に即した前置きを用意しておきましょう。

事前に前置きや言い回しを変える

具体例を挙げましょう。実際に僕が最近経験した会議での1場面です。

場面:来賓の「○○さん」が言いづらいけれども台本に「○○さんは、○×株式会社取締役社長・・・」と続くケース。   が前置き。

  • ご来賓席、右側からご紹介させていただきます。○×株式会社取締役社長、○○さんは、・・・
  • 本日はお足元の悪い中、ご足労いただきまことにありがとうございます。○○さんは、○×株式会社取締役社長・・・

前置きは数秒程度で言い終わる短いものにしましょう。前置きを話している間に緊張は緩和されます。前置きでも緊張が十分解けない場合は、場面によっては台本の文言を前後させるなど、苦手な言葉をなるべく文頭から離すこと、類義語に置き換えるなどして対処しましょう

緊張のほぐし方まとめ

大勢の人の前で話すことは誰しも緊張するものです。しかし対処法を身に着けれ緊張を緩和することができ、吃音を軽減することができます。ポイントは、緊張は話すことによってのみ緩和されるということです。言いやすい言葉で前置きを作り、数秒間話す時間を設けることで緊張は大幅にやわらぎます。

しかし演劇などでセリフが決められていたり、言い回しを変えることが困難な場合もあるでしょう。その場合は周囲の関係者と事前に協議することでセリフ自体を変えましょう

セリフが特に固定化されていない場合でも、前置きが長くなってしまうと制限時間内に発表が終わらないなど不都合が生じます。前置きは必要最小に、最大でも10秒を超えない程度にとどめましょう

吃音歴が長いとその分多くの緊張する場面を切り抜けています。その経験を通して、緊張を極めて短時間でやわらげる方法を身に着けていくので、人前で話すこと自体に苦難を感じなくなります。まずは正しい緊張のやわらげ方を身に着けて改善を図っていきましょう。

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