
内申点が書かれる調査書って、入試ではすごく重要って聞いたことがあるけど、どんな内容なの?
公立と私立で内容が違うよ!実際の資料を見ながら解説しましょう。

目次
調査書って何?
調査書は受験者が中学校で励んだ学習状況や、注力した活動、出席状況、そして通知表の成績が記載されます。
調査書の中でも通知表の成績は内申点として特に重視されます。
調査書は受験生が在籍する中学校の校長が作成し、受験生が受験する高校に提出します。
公立高校の調査書の様式は各都道府県に設置された教育委員会が定める一方で、私立高校の調査書の様式は各私立高校が定めることができます。
これは公立高校の場合、入学者の選抜方法は教育委員会が定めている一方で、私立高校の場合は入学者の選抜方法は各校で自由に定めることができるからです。
私立高校が加盟する私学協会というものが各県に設置されていて、私立高校の調査書の様式は「私学協会の様式に準ずる」としている高校がほとんどです。
つまり、各都道府県によって、公立・私立によって調査書の内容が異なります。
茨城県公立高校が用いる調査書の様式と書く内容

これは公立高校入学試験で提出される調査書の様式で、書き方は教育委員会によって規定されています。
茨城県では全9項目から構成されますが、一つずつ具体的に項目の内容を紹介しましょう。
内申点が決定する項目
調査書の中でも特に重要なものが「1 各教科の学習の記録」の評定の欄です。この項目は内申点と呼ばれ、合否判定に直接かかわる最も重要な項目です。
茨城県公立高校では、中学1~3年までの9教科5段階の評定の総合値135点満点が内申点として評価されます。
観点別学習状況
内申点、つまり通知表の評定は「学習の記録」の左、「観点別学習状況」によって決定します。
観点別学習状況はA、B、Cの3ランクで評価される項目です。
文科省が作成した資料によると、各項目の評価基準は以下の様になります。
茨城県教育委員会では、公立高校の入試において「観点別学習状況」の評価方法を定めていません。つまり記載はされるけれども、評価方法は各高校に一任している状況です。
内申点ほど重要な項目ではありませんが、選抜に影響する場合もあると考えてよいでしょう。
総合的な学習時間の記録
中学3年間の生徒の学習状況で顕著なものを記載する項目です。
それぞれの年次で学習した内容のハイライトと、どのような力が身についたか記載されます。
学校で学んだ内容の履歴を書くだけですから、選考の際に優劣がつきにくいため、評価にはそれほど大きく影響しないと考えられます。
記載例としては以下の様になります。
特別活動の記録
学級委員、生徒会、学校行事委員での活動記録を記載します。
入試の選考に影響しないとは言い切れませんが、そこまで強い加点ポイントとは言いづらいです。
しかし、3年間を通して何一つ委員会に参加していなければ悪目立ちします。
可能な限り全学年を通して何かしらひとつは委員会等に属していた方が良いでしょう。
委員長や団長などになる必要はなく、委員会に属しているだけで記載されるので、お手軽です。
記載例は次の通りです。
特別活動に関する事実及び所見
上で示した特別活動に関する所見が記載されます。
こちらも、3年間で何一つ活動履歴が無いと、選考の際に不利になる場合があります。
記載例は次の通りです。
特色選抜を受ける場合は、この欄に具体的な実績を記載します。
行動の記録
どのような生徒であるかを10項目によって記載する場所です。
例えばクラスのムードメーカーで責任能力が高いなど、生徒の人となりについて記載されます。
基本的に悪いことは書かれないので、特に選考に影響する可能性は低いと考えられます。
人格は変えようと思ってもすぐには変えられませんからね。特に対策は不要といっても良いでしょう。
部活動・特技等の記録
特色選抜を受ける場合は、出願要件に関わる実績が記入されます。
特色選抜を考えている場合は、内申点に続いて2番目に重要な項目と言って良いでしょう。
一般選抜の場合は資格、校内外のスポーツ、文化、芸術、ボランティア活動の履歴を記入します。
部活や習い事などに精力的に取り組み、コンクールや大会、資格など、何かしらの公式記録を残すことができれば理想です。
欠席日数
ある意味内申点以上に重要な項目です。
特に公立高校では、毎日ちゃんと学校にくることが重視されますので、不登校などで長期の欠席履歴がある場合は特に注意が必要です。
年間あたり数日程度の欠席なら一般的な範囲内ですが、欠席日数が年間10日を超える場合は理由を記載しなければいけません。
学力検査の点数や欠席の理由に関わらず、欠席日数が多いだけで不合格になる場合があります。
せめて真っ当な理由があれば減点を避けたり、選抜対象から外されることを避けることができるかもしれません。
体力テスト
3年次の総合判定をA、B、C、D、Eの5段階評価で記載します。
特に選抜には大きな影響はなさそうですが、運動部関係の特色選抜を受ける場合は、相応の体力をつけていないと、もしかすると減点を食らうかもしれません。
茨城県私立高校が用いる調査書の様式と書く内容

私立高校の入学者選抜は教育委員会の管轄ではありません。
高校で自由に書式を決めることが出来、例えば江戸川学園取手高校など学校独自の調査書の様式を設けている高校もあります。
各都道府県には私学協会というものが設立されており、私立高校は協会の様式(上の図)に準じています。江戸川学園取手高校のように、独自の書式を設けていても協会の書式にも対応している高校もあります。
評価方法も学校によって異なるので、記載項目があるから何かしらの評価を受けるというものではありません。
例えば欠席日数については、記載項目があっても欠席日数を評価しない高校もあります。
私学協会とは何か簡単に説明すると、私学同士の連携や教育に関する研究、国に対する陳情・要望活動を行う民間の団体です。
茨城県私学協会が定める様式では、6項目の記載カ所があります。それぞれ見ていきましょう。
最も大事な内申点の項目(私立)
私学協会の様式では、内申点は3年次のみの成績だけで算出されます。
1~2年生の評定が低くでも記載されないので、評価されることはありません。
ここが公立高校と大きく異なる部分ですね。
ただし欠席の記録は1~3年の3年間の記録が記載されるので、1~2年生時に不登校だったなど、長期間休んだ履歴がある場合は、マイナス評価になることがあります。
その他の記載項目
記載項目 | 記載内容 |
行動の記録 (第3学年) | 公立高校の様式の第5項目「行動の記録」に準じると考えられる。 |
欠席の記録 | 公立高校の様式の第7項目「欠席日数」に準じると考えられる。ただし各学年で7日以上休んだ場合は理由を記載する必要があり、公立高校の場合の閾値(10日)と異なる。 |
特別活動の記録 | 公立高校の様式の第4項目「特別活動に関する事実及び所見」に準じると考えられる。推薦入試では推薦条件を満たす具体的な内容が記載されると思われる。 |
部活動・特技等の記録 | 公立高校の様式の第6項目「部活動・特技等の記録」に準じると考えられる。推薦入試では推薦条件を満たす具体的な内容が記載されると思われる。 |
特記事項 | その他特筆すべきアピールポイントが記載されると考えられる。 |
あいまいな表現になってしまいますが、各高校のホームページを調べても記載方法に関する資料は見当たりませんでした。上の表で紹介した記載内容は全て筆者の推測になりますので、あくまで参考程度にとどめて下さい。
茨城県私学協会では様式は掲載されていますが、書き方までは記載されていません。しかし公立高校の様式と一致する項目は同等の記載内容になることが考えられます。
どのような内容が書かれるか、具体例が知りたい時は学校の先生に聞きましょう。
公立高校と私立高校の調査書の違い
公立と私立で異なる部分のうち、特に重要な部分をまとめましたので、参考にしてください。
項目 | 特に注意したい相違点 |
内申点 | 公立:3年間の評価の合計135点満点 私立:第3学年の評価の合計45点満点 |
欠席の記録 | 公立:各学年で10日以上の欠席があれば理由の記載が必要 私立:各学年で7日以上の欠席があれば理由の記載が必要 |
この記事の参考文献
この記事は以下の資料を参照しています。もし上で紹介した以上に具体的な内容を知りたい方は参照してください。
ただし将来的にリンク切れが予想される年度更新の資料については資料名のみ記載します。
出典 | 資料名 | 公開日(改正日) |
茨城県教育委員会 | 令和6年度茨城県立高等学校入学者選抜実施細則 | 令和5年11月 |
茨城県私学協会 | 私立高等学校 入学志願者調査書(茨城県私学協会標準様式) | 令和2年度 (令和7年度入試も有効) |
独立行政法人教職員支援機構 | 新学習指導要領に対応した学習評価(小・中学校編) | 不明 |
文部科学省 教育課程部会 | 学習評価の現状と課題 | 平成29年12月 |
江戸川学園取手高校 | 2025年度入試要項 および 入学志願者調査書(2025年版) | 令和6年度 |