
「英語でプレゼンしなきゃいけないんだけど、どうすりゃいいの?」
「研究発表やったことないんだけど、どんな風にまとめればいいんだろう・・・」
現役研究者の筆者が、茨城県のSSH指定校が主催する高校生の研究発表会に参加してきました。
今回は実際に高校生の発表を見て気付いた改善点をもとに、「研究発表のコツ」を12個ご紹介します。
特にSSH指定校では英語でのプレゼン発表を行う学校も多いので、これから研究発表を控えている高校生や、指導する先生方の参考になればうれしいです。
それではいきましょう!
高校生の英語の研究発表会ってどんなことをやるの?
よその高校ではどんなことやってるんだろうって興味がある先生方、これから発表を控える現役の高校生もいますよね。
今回は茨城県立緑岡高校が主催する「第11回英語による科学研究発表会」に参加してきましたので、内容を紹介します。
SSH指定校3期目となる緑岡高校でのとりくみ
緑岡高校は難関校として知られており、毎年多くの学生が旧帝国大などの難関大学に進学しています。
令和7年度でSSH指定校の3期目を迎えました。
緑岡高校の理数科では「英語による科学研究発表会」に関する授業が必修科目になっており、今年で取り組み始めてから11年目を迎えます。
発表会は提携先の茨城大学の講堂で行われ、緑岡高校以外にも山梨県や宮城県などから総勢10校、54テーマの発表が行われました。
| 学校名 | 所在地 | 発表テーマ数 |
|---|---|---|
| 緑岡高 | 茨城県 | 10 |
| 豊島丘女子学園 | 東京都 | 14 |
| 戸山高 | 東京都 | 7 |
| 仙台一高 | 宮城県 | 3 |
| 中央大付属高 | 東京都 | 7 |
| 日立一高 | 茨城県 | 2 |
| 東海大附属高輪台 | 東京都 | 1 |
| 韮崎高 | 山梨県 | 4 |
| 大田原高 | 栃木県 | 3 |
| 佐倉高 | 千葉県 | 3 |
実際の様子をお見せしましょう。
第11回 英語による科学研究発表会の様子

高校生同士が研究チームを組み、チームで研究した内容をポスターにまとめて発表します。
最初にポスターの内容を口頭で発表する担当者が、約300人はいるであろう観衆の前で巨大なスクリーンを使って1分ほど発表します。
口頭発表のあとに2時間のポスターセッションがあり、研究チームのメンバーが時間交代で説明します。
みんな自分が興味があるテーマの発表を聞きに行って、話し合っていました。

高校生ならではの面白いテーマが沢山ある
みんな興味深いテーマでしたが、中でも高校生らしい着想を得たテーマがいくつかったので紹介します。
題名を見ただけで「聞いてみたいな」って思いませんか?
中でも「食べものから作る折り紙」はかなり人気でした。
家庭内にある食材を使って折り紙を作ろうという画期的なアイデアで、まさに大人では発想できないようなテーマです。
折りやすい紙にするためにデンプン量と水分の調整が難しく、さらにカビなどの要因にもなるため保存方法に課題があるとの報告でした。
もし続編があれば期待したいですね
高校生の英語プレゼン 研究発表のまとめかたのコツ7こ
さて、様々な発表を聞いたのですが、こうしたらもっと良いのにな、と感じるポイントがいくつかありました。
発表資料のまとめかたについて、よく見かけた改善点を7つ紹介しましょう。
初見でもわかるように伝えるという意識が一番大事
1番大事なことは、相手にわかりやすく伝えることです。
せっかく面白い内容なのに、言いたいことが伝わってこない発表資料がとても多いんですよね。
分かりにくい言い回しがあったり、図や表が見にくかったり、相手に伝えたいんだって気持ちが薄いのかなぁと感じました。
特にメンバー以外の人に見てもらうことは絶対にやってください。
実際に論文を出すときでも、何度も自分で書き直した後で、複数人の共著者に見てもらってコメントをもらいます。
自分の研究を伝えたい、その気持ちが一番大事なんですよ
ポスターは写真、図、グラフで視覚的に訴える
高校生のポスターを見ると、文字ばかりで写真や図、グラフがほとんどないものをよく見かけます。
研究テーマによってはグラフが出てこないものもありますが、写真や図は必ず何個も入れましょう。
文字を読ませるよりも視覚的に訴えた方がわかりやすいんですよ。
ぼくが学会のポスターを作る時に目安にしているのが、文字3割くらいですね。
7割くらいは写真や図、グラフで埋めることが多いです。
文字は本当に言葉で伝えたい、たとえば結論や背景の部分にしか使いません。
文章を使うときも、箇条書きでできるだけ簡潔に書くことに気を配っています。
補足するために、図や写真の中に文字を入れることもあります。
文字だけで説明することは、できる限り避けましょう
導入部分の「背景」を伝える
背景って漠然とした言い方ですが、「なぜこの研究をしているのですか?」っていう意味です。
いきなり研究テーマに入っても、内容に理解がついていけません。
あなたたちだって、いきなり難しい研究の話をされても理解が追い付かないでしょ?だから導入って大事なんですよ。
「私たちの研究チームは、○○という経緯があって△△というテーマに興味を持ちました」
という短文でいいので自己紹介を最初に入れましょう。
すると聞き手はスムーズに内容を理解しやすくなります。
例えば、ある高校生チームが防音の研究をしていたんですね。
「ぼくらは吹奏楽やってんだけど、家で練習するにも部屋が防音じゃないから、どんな材料で壁を覆えば良いか知りたかったんだ」
って説明されると「あ~、なるほど。この子たちは壁に貼って防音するために、音響吸収に関する材料研究をやったんだな」って理解できるじゃないですか。
理解しやすい発表には入りやすい導入が不可欠です
図はわかりやすく丁寧に書く
高校生の作図、残念ながらめっちゃ下手です。
そもそも図が載っていないポスターも多いですが、せっかく載せていても説明が不十分だから理解の補足になってないんですよ。
参考文献からそのままコピーしてきたような図がいきなり出てくるようなポスターを作っちゃう子もいます。
「この図で何を説明したいのか」って点を常に意識してください。
作図した後で友達に見てもらって、「この図で○○ってことを伝えたいんだけど大丈夫かな?」って確認しましょう。
文献に書いてあったからこれでOKでしょって考え方はマジでやめてください。
文献の図で伝えたいことが100%伝わるならいいですが、だいたいポスターにすると伝わってきません。
グラフは見やすく大きく横軸と縦軸をしっかり書く
計測器の画面を写真に撮ってポスターに貼り付けてくる高校生もいます。
めっちゃ見づらいんですよ。
「縦軸と横軸が何を示すか」くらいは最低限書いてください。
できれば計測データをパソコンに取り込んで、Excelなどで表にしましょう。
小さくて見づらく、横軸も縦軸も書いていないのはNGです。
参考文献の言葉じゃなくて、自分の言葉に置き換える
参考文献に書いてある通りの言葉をつかう高校生も見かけます。
自分の言葉に置き換えて説明しないと、結局わかりづらい発表になります。
必ず自分たちで言葉の意味を消化してから資料に落とし込むようにしましょう。
文献に書いてあるんだから大丈夫でしょって考えだと、聞き手が理解できなくなるので不親切です。
聞き手は必ずしもその言葉を知っているわけでもありません。
同じ理由で学名や専門用語も避けるようにしたいですね。
ポスターの余白は分散させる
下側がスカスカってポスターも見かけます。
1ヶ所だけに余白が集中していると、未完成の印象が強くなるので余白は分散させましょう。
余白は悪いわけではありません。
文字びっしりの資料よりも見やすくなるので、むしろ項目の間などに余白は適宜挟んだほうがいいです。
ただ、もともとの余白が大きすぎるとスッカスカになって中身が無いように見えてしまうことが困るところですよね。
高校生の研究テーマでA0サイズのポスターをぎっしり埋めろって言っても、かなり難しいと思います。
書くことが少なくて困っているなら、図を差し込んでわかりやすい資料を目指しましょう。
イメージ図など、まだ入れることができるモノはあるはずです。
高校生の英語プレゼン 話し方のコツ5こ
上手く話すことではなく、相手に伝えることが重要
高校生の発表を聞いていると、どうしても「失敗しないようにうまく話そう」ということだけに注力しているように見えます。
文法や発音を間違えないように、なんならネイティブ並みの発音を意識したり、早く話そうとしていますよね。
「専門用語を取り入れるとカッコいいかも」とか、「カンペはダサいから台本を全部覚えよう」という人も多く見かけます。
でも、そんなことより1番大事なのは伝える事なんすよ
大事なのは相手に分かりやすく伝えること、聞き手ファーストになることが1番大事です。
今回参加した発表会では50人以上の口頭発表者がいましたが、聞きやすかったのは1~2人いたかどうかですね。
途中で詰まるのが怖いなら、カンペの方がいいんです。
発音が下手でもいいんです。
専門用語なんて無いほうが良いし、声が震えてたっていいんです。
自分と同じような理解度の聞き手を想像して、聞きとりやすい速度で、わかりやすい単語を使って話すことが大事なんですよ。
背景を説明してから研究内容に移る
背景の重要さは上でも伝えましたが、まずは自己紹介してください。
高校名だけじゃなくて、どうしてこの研究に興味を持ったのかまでが「自己紹介」です。
結構みんな背景を飛ばしていきなり研究内容の説明に入るので、背景を気を付けるだけでも大分わかりやすくなります。
聞き手が付いてこれるスピードで、ゆっくり研究内容に入るとGoodでしょう。
専門用語は言い換える
専門用語はできる限り言い換えましょう。
例えばミジンコ(water fleas, 学名:Daphnia)など、日常生活で使わない単語を使うときは必ず写真付きで解説しましょう。
さらに研究発表会とはいえ、学名よりも日常名の方がイメージしやすいです。
「知ってて前提」じゃなくて、「自分も知らなかったから、相手も知らないかも」という視点で文章を考えましょう。
できるだけ優しい単語で話す
専門用語もそうですが、言い回しも簡単な単語だけで構成すると伝わりやすいです。
例えば"Conduct"や"Perform"よりも"Do"や"Take a place"の方がわかりやすいし、"Confirm"よりも"Check"の方が簡単ですよね。
ちょっと難しい単語を使いたくなる気持ちもわかりますが、わかりやすさを追求する姿勢を忘れないでください。
単語は使い慣れていないと聞き取れないので、あまり英語に慣れていない高校生同士が会話するときは単語の単純化を意識しましょう。
できるだけ中学校で習う基礎単語だけを使って離すように心がけると、わかりやすい発表になります。
材料など聞きなれない名詞の後には補足の文言を用意しておく
材料に関する名詞は発表する上で避けて通れないテーマの人もいます。例えば材料研究しているテーマですね。
大体聞きなれないので、意味が伝わらないことも多いでしょう。
あまり聞きなれない材料であれば、その後で補足の文言を用意すると相手も理解しやすいです。
例えば耐熱性が研究テーマなら「ポリイミド(Polyimide)」はよく見かけます。
漆のようなものから作られた物で、何かの熱を軽減するために、宇宙分野に使用されているようだってのが分かりますよね。
写真を使って説明すると、さらにわかりやすいです。
言い換えや、写真の使い方はめっちゃ大事ですよ
高校生の英語プレゼン・研究発表のコツまとめ
今回は、SSH指定校の3期目となる茨城県立緑岡高校が主催する「英語による科学研究発表会」にお邪魔しました。
その中で感じた改善点についてまとめたので、これから発表を控える高校生、そして指導する先生方の参考になれば幸いです。
研究発表について一貫して言えることはたった1つ。
相手に知ってほしいという気持ち、そして分かりやすく伝えるという姿勢が大事
折角発表するんですから、わかりやすく伝えましょう!
