
この記事では、通信教育が続かない小中学生の保護者に向けて続かない原因と解決法を解説します。
執筆にあたり、20件以上の通信教育に関する国内外の研究、調査を参考にしました。
通信教育は塾などの対面型と比べて続けにくく、途中離脱はかなり多いと思ってください。
例えば通信学習と対面型を比べた調査では、最大で20%ほど離脱率が高かったとの報告もあります。
因みに海外の例では、通信教育は40~80%程度が離脱するとの報告もありました。
さて、通信教育が続けにくい原因は何でしょうか・・・?
通信教育が続かない7つの原因

勉強する習慣が身についていない
通信教育では提出が遅れても注意してくれる人がいません。
Z会などでは「学習計画」や「進捗管理」をサポートする機能をもつ通信教育はあります。
しかし結局はお子様自身が学習を管理することが大前提だということは注意しましょう。
勉強する時間が決まっていない
通信教育はスキマ時間に進めることができるなど、時間的な自由度が高いです。
実際にニューヨーク市立大学の研究では、「時間の自由度」が通信教育の主な離脱理由の1つだと報告しています。
時間の自己管理ができないと通信学習の優先度が下がってしまう側面もあります。
あらかじめ勉強する時間は固定しておいた方が良いでしょう。
教材のレベルや量が合っていない
課題の難易度と量のミスマッチもよくある離脱理由です。
慣れないうちは、全部の課題を解こうとせず進められる分だけ着手するのも有効です。
最初につまずいてしまった
最初につまずくいて遅れが生じると、取り戻せないことでやる気が下がることも離脱に繋がります。
ペンシルベニア大の研究では、通信教育を開始した直後の2週間の行動だけで以後の離脱率を約90%の精度で予測できたと報告しています。
だから始めたてほど、お子様の様子をよく観察することが重要です。
続かなさそうなら声掛け、続かない原因を分析しましょう。
保護者のサポートが不足している
特に通信学習では自律した学習が大事ですが、いきなりお子様1人では続けることは難しいです。
公的機関(OECD)が実施したアンケート(PISA)では、『勉強を1人で進めることができる』と回答した高校1年生は全体の35%だけです。
だから大多数のお子様はサポートが必要なわけで、保護者の役割はめちゃくちゃ重要です。
1人で勉強を進めることができる環境づくりが保護者の役目
勉強する意味や楽しさを感じられない

大人でも楽しくないことを続けることは難しいですよね。
実は、自信がつくほど勉強が楽しく感じやすいということが知られています。
ここでも保護者のサポートが効いてきます。
困ったときに、1人で抱え込まずに済む環境ではない
通信教育は相談にのってくれる先生もおらず、力強いサポートも乏しいので孤独な戦いになりがちです。
親身になってくれる身近な人の存在はかなり大きいです。
1人では解決が難しい問題は、解決方法をご家族で話し合いましょう。
通信教育を続けるために家庭でできる4つの工夫

保護者のサポートと言っても、何でもかんでも勉強に関与すれば良いわけではありません。
だから難しいんですよね
約38万人の保護者を調査した報告書では、自律性を支えるようなかかわり方が成績向上に関連性が強いことが分かっています。
この章ではもっと具体的に、お子様の勉強とのかかわり方を解説します。
親子で学習の仕組みをつくる
勉強が続かない子は、進め方が分かっていない場合が多いです。
勉強は『いつ、何を、どこまでやるのか』が分からなければ進めません。
中3生を対象とした調査でも、自分で勉強を進める子は共通して目標や計画を立てていることが知られています。
毎日の行動と勉強を結びつける
勉強が習慣化していないお子様は、普段の行動と結びつけることで習慣化しやすくなります。
個人差がありますが、早ければ2週間程で新しい習慣が根付くという実験結果もあります。
このように、既に習慣になっていることと、新しく習慣化することを結びつけましょう。
できるようになったことを褒める
何をどうやって褒めたらいいか分からないという保護者も多いはず。
約8万人の学生を調査した結果、「自分はできる」という自信が自律的な学習に不可欠だったとする報告もあります。
頑張ったことを具体的に褒めてもらえると、「ちゃんと見てくれているんだ」という安心感も生まれます。
このように、本人の努力を認めるような褒め方を心がけましょう。
困ったときに1人で悩まない環境をつくる
通信教育では不安や疑問がタイムリーに解決できるとは限りません。
だから悩みを溜め込まない仕組みが大切です。
親は常に相談してほしいと思っているものですが、こんな心境を持っているお子様もいます。
問題の解き方ならChatGPTでも懇切丁寧に教えてくれます。
今後の進め方など、プロに確認したい相談なら通信教育のスタッフ、学校の先生が良いでしょう。
保護者は出来るだけ多くの解決手段を準備することが役割です。
気を付けたいNGな4つの言動

保護者が勉強に干渉しすぎると、子どものやる気も下がってしまいます。
この章では、保護者のかかわり方のNG版を解説しましょう。
叱って勉強させる
せっかく申し込んだのに、放置されている教材を見ると腹も立ちますよね。
「勉強しなさい!」と叱りたくなるものも分かります。
叱られたり、細かくルールを決められることで、心の余裕が無くなるほどやる気が下がる傾向が知られています。
特に罪悪感や恥、不安を利用した叱り方(心理的コントロール)は避けた方が賢明です。
約13万人を調査とした研究では、心理的コントロールが強いほど自分から勉強しなくなるという相関関係が明らかになっています。
結果だけを見る
一番大事なのはテストや模試の成績が上がる事ですよね。
もちろん結果の確認は大切ですが、結果主義にこだわるのはNGです。
結果だけを見て責めることは避けましょう。
勉強の過程を否定するような声掛けを続けると、
「自分はできないんだ・・・」➡「どうせ自分には無理」
となってしまい、勉強と向き合うことが嫌になります。
不安だけを強く刺激する
テスト前に焦って勉強した経験がある保護者もいらっしゃるでしょう。
不安を感じると勉強に集中できるように見えるかも知れません。
今の状態と目標の差があって不安に感じることは正常です。
しかし不安だけを刺激するような声掛けは避けましょう。
デキる兄弟や友達と比較して劣等感を刺激する
劣等感から競争心が芽生えてやる気が出るケースもあります。
しかし「劣等感」は「自信の喪失」と繋がります。
自己否定につながった瞬間に、「もう教材を開きたくない」という気持ちが芽生えます。
通信教育が続きにくいご家庭では、むしろ「自分はできるんだ」という気持ちを刺激しましょう。
「もっと頑張ろう」というモチベーションを作ることが大切です。
「合わなければ変えればいい」は危険
通信教育を安易に変更すると、同じ轍を踏むことにも繋がります。
変えること自体は悪い事ではありません。
合わないものを続けていても効果が低いですし、変えた方が良い時もあります。
なんとなくうちの子には無理っぽいから、もっと合いそうなものがあるかも。
など、あいまいな原因分析に留まると次も失敗する可能性が高いです。
原因をリストアップして、どうしても通信教育を変えなければ解決できないか確認しましょう。
ここで、原因をできるだけ詳しく分析しないと、次の方針が立ちません。
このように明確化できれば、次は質問をリアルタイムで解決しやすいサービスを探すという指針が立ちます。
変え先を検討するためにも、徹底的に原因を分析しましょう。
変えることを検討すべき家庭の特徴3つ

合う合わないを見極めて、方針を変える決断も必要です。
ではどういった家庭が、変える事を検討すべきでしょうか。
1人で学習を進めることができない
通信教育はサポートが重要という話をしましたが、四六時中つきっきりのサポートはできません。
ただ、1人で進めるには大きなハードルが2つあります。
1人で進められない子は、意志が弱いのではなく進めるための要領が分かっていません。
もしこんな状態なら、塾などサポートが強いサービスに変えるべきです。
1人で疑問を解決できない
1人で進めるには、分からない壁にぶつかったときに解決するスキルが必要です。
実はメールでの質問やAIなど、1人で疑問を解決できる方法はたくさんあります。
このような状況ならば、分からない部分を拾ってもらえるような対面学習の方が良いでしょう。
タブレットコースを利用しているけど、タブレットが合わない
タブレットの方が機能を追加しやすいというメリットもあり、タブレットだけの通信教育も多いです。
紙テキストなら集中できるのに、タブレットだとどうしても違うことがしたくなる。
そういうときは紙テキストが利用できる通信教育に切り替えた方が良いでしょう。
まとめ:続かない理由は『仕組み』が整っていないから
続かない理由を一言でまとめると『仕組み』が整備できていないからです。
今回の記事をまとめると、続けるために必要なポイントは次の4つです。
通信学習の利用者の多くは、継続性に悩んで脱落してしまいます。
いきなり1人に任せるのではなく、今回紹介したポイントを踏まえてサポートしてあげましょう。
参考文献
この記事で参考にした文献を紹介します。
通信教育・オンライン学習の継続と離脱に関する調査・研究
- 伊藤・神藤(2004)
- Hachey, Wladis & Conway (2023)
- de la Varre et al. (2014)
- Bağrıacık Yılmaz & Karataş (2022)
- Rahmani, Groot & Rahmani (2024)
自律学習・学習習慣に関する調査・研究
保護者の関り、自信に関する調査・研究
- 西村・櫻井(2013)
- 青島・鈴木(2022)
- 鹿嶋・田中(2013)
- Bureau et al. (2022)
- Bradshaw et al. (2025)
- Ryan & Connell (1989)
教材のレベルや負荷と学習継続性の関係
学習の習慣化に関する調査
- 中井(2018)『学校心理学研究』18(1), 29-41
- 中井(2018)『教育心理学研究』66(4), 263-275
- 福谷・皆川(2022)
- Aarts & Dijksterhuis (2000)
- Schaaf et al. (2025)